西表島の自然と文化を守り、次世代へ繋ぐことを目的とする「Us 4 IRIOMOTE」では、「エシカル・ツーリズム」という新しい旅のスタイルを提唱し、西表島を訪れるツーリストに向けて「ただ楽しむだけではなく、感動を与えてくれた島に”小さな恩返し”ができる旅をしよう」という提案をしてます。
その具体的な一歩として、去る5月30日、”ゴミゼロ”の日に、ビーチにある「漂着ゴミ」、特に小さなプラスチックゴミをみんなで拾ってみんなでソーシャルアート作品をつくる「YAMANEKO 530 ART」プロジェクトがスタートしました。
世界で2番目のプラスチック排出国、日本。
海面や海中を漂っている「漂流ゴミ」や、それらが海底に積もった「海底ゴミ」、そして海岸に流れ着いた「漂着ゴミ」などの「海洋ゴミ」が、世界中で問題になっています。環境省の調べによると、世界中で毎年800~1300万トンものゴミが川や海に排出され、そのうちの約80%がプラスチック製品だといわれています。
2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で「このままでは、2050年の海には魚の量を超えるプラスチックゴミが存在することになる」と予測された通り、年々深刻さを増している海洋プラスチック汚染に対しては、これまでに世界各国で発泡スチロール容器の使用制限や使い捨てレジ袋の廃止などの政策が施行されたり、プラスチックストローの全廃など、企業レベルでの対策も進められています。
しかし、世界有数のプラスチック生産国であり、アメリカに次いで世界第2位のプラスチック排出国(1人あたりの使い捨てプラスチックの使用量/国連環境計画調べ)でもある日本には、まだ国家レベルでの具体的な対応策がなく、遅れをとっているのが現状です。
西表島でも深刻な漂着ゴミ
西表島をはじめとする沖縄県八重山諸島の美しいビーチは、世界中から訪れる多くのツーリストを魅了しています。しかし近年では、「海洋ゴミ」がこの地域の島の海岸線にも大量に打ち寄せられ、大きな課題となっています。
一見すると白砂が美しい西表島のビーチ。けれどよく見てみると、砂の中や、海藻や種などの自然の漂着物の中に小さく砕けたプラスチック片が混ざっています。
こうした小さなプラスチック片は大きなゴミよりも回収が難しく、放置されると、やがて南の島の強い太陽と風にさらされて5ミリ以下のマイクロプラスチックとなり、海辺の生物が食べたり、有害物質が土壌や水脈に浸透するなどして島の生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
2001年頃から西表島島内で漂着ゴミの収集と調査を行っている「西表エコプロジェクト」によれば、西表島の漂着ゴミは約96%がプラスチック製品であることがわかっています。
「西表エコプロジェクト」をはじめとする地元の有志ボランティアやNPO、行政などの恊働による海岸清掃活動が定期的に行われていますが、増加傾向にあるゴミの量や離島ゆえに高額な処理費用など、回収した後にもさまざまな課題があり、島民だけで解決することが難しくなっています。
この課題に、ツーリストの私たちにもできること
西表島の聖地、トゥドゥマリの浜でも、わずか5分程度で両手いっぱいのプラスチック片が集まります
日常から遠く離れているはずの南の島で、目の当たりにする地球規模の課題。間違いなく、私たちの便利な生活と繋がっているビーチの現状を見て、「私たちツーリストにもできることはないだろうか?」と考え、「みんなが“無理なくできる範囲”で、少しずつ小さなゴミを拾って持ち帰ったらどうだろう?」という想いから生まれたのが、「YAMANEKO 530 ART」プロジェクトです。
旅の途中でビーチに立ち寄って、ほんの少しの時間、片手分くらいの小さなプラスチックゴミを拾ってみてください。そして船に乗り、八重山諸島への玄関口である石垣港離島ターミナルに着いたら、平田観光ブースに設置されている「YAMANEKO 530 ART」BOXに入れてください。「チリも積もればアートになる!」を合い言葉に、1人ひとりの小さな「行動」を積み重ねてソーシャルアートをつくること。そして西表島が教えてくれる「地球人としての私たちの課題」を広く知ってもらい、日々の生活にそれぞれが持ち帰ること。それが、このプロジェクトの目的です。
とても魅力的な旅先である西表島、そして八重山諸島を訪れた際には、ぜひこのプロジェクトに気軽に参加してみてください。私たちはこれからも、海洋プラスチック問題に注目していきます。
「YAMANEKO 530 ART」には他言語で記された解説板を設置し、国内外から訪れるツーリストに向けて、海洋プラスチック問題について知っていただく訴求を行っています。
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